前回、腐植の生成は3日で起こると記事にしましが
それをもう少し追加で説明しようと思います。
腐植の生成過程は主に3つの段階で進行すると考えられています。
第1段階
前回、わずか3日で腐植の生成が起こり始めると話した部分ですね。
炭水化物やタンパク質などのデンプン、糖類、アミノ酸などの低分子の有機物がまず分化され
数日で、二酸化炭素、水、アンモニアになります。
CmH2nOn → CO2 + H20 + NH4
第2段階
高分子化合物の分解であり、全体として数か月かけて行われます。
第1段階同様、タンパク質が分解されてアミノ酸となり、二酸化炭素、水、アンモニアとなります。
次にヘミセルロースやセルロースなどが分解され、糖や有機酸を経て二酸化炭素と水になります。セルロースは植物細胞の細胞壁や食物繊維の主成分ですね。
そして最後に、リグニンが長い時間をかけて徐々に分解されていきます。
第3段階
数年と長い時間をかけて分解が起こる段階です。
もともと分解しにくいリグニンが長期に渡って分解されポリフェノールやキノンといった化合物に変化します。これらが粘土鉱物を触媒として重縮合により複雑な構造を持った腐植物質へと変化していき腐植が蓄積していきます。
では、第3段階まで経過しないと腐植にならないのかというと、そうでもありません。
前回も述べた様に最初の段階で、わずか数日から腐植の生成が始まっています。
これはどういうことかというと、腐植の種類が違うと考えられます。
腐植には、最初の段階である糖類やタンパク質が分解されて出来た腐植と
リグニンが分解されて出来た腐植とではその構造が違っていてその成分や影響も違ってきます。
前者の比較的数日で出来る腐植は、分解されやすく
後者のリグニンが多く含まれる腐植は非常に分解されにくく安定しています。
また、この分解されやすさは下に示す3つの条件で変わってきます。
- 温度
- 空気や水分などの土壌3相の割合
- pHや土壌養分
まず①の温度について
暖地より寒地の方が腐植は集積しやすくなります。温度が高いと、有機物は分解されやすくなるのでしたね。
だから暖地では土壌中の有機物がすぐに分解され腐植が生成しても蓄積する前に分解されてしまいます。
有機物の分解は30℃が最も激しく、25℃程度が植物の生成にとって最適であり、10~20℃で腐植の蓄積が多くなります。
沖縄などの温帯地方では、土壌が激しく分解され赤や黄色の土壌が多く、黒く腐植の生成している土壌はほとんど見られないことからも分かりますね。
次に②の水の空気の関係では、土壌微生物と大きく関係します。
水がカラカラに乾燥している状態では、土壌微生物が活動することも出来ませんね。逆に水分ばかりで空気がない状態でもしかり。土壌微生物が活発に活動できる水分割合は、最大要水量の50~60%の時であり、この状態では腐植は蓄積しにくい状況です。
最後に③のpHについて。
土壌微生物も中性~弱酸性で活動が活発的になるので、酸性が強くなるほど活動しにくくなります。
活動が抑制されれば分解も進まないので、腐植は蓄積しやすくなります。
また、土壌養分が多く栄養が多い状態でも微生物活性が高まり分解されやすくなるので腐植は蓄積しにくくなります。
以上のことから、腐植が生成しやすい条件とは
- 温度が低いこと
- 水分が過湿であること
- pHが低いこと
これらの条件に合致するところを考えてみると、泥炭地帯が当てはまります。
ヨーロッパやカナダ、北海道などでは泥炭(ピートモス)の産地として有名ですね。
また、過湿条件(排水不良の沼地や水田)では、有機酸が生成しやすく、これがさらにpHを低下させる要因になります。これにより更に腐植が蓄積されやすい条件となっていきます。
泥炭(ピートモス)は腐植の高い土壌改良材でしたね。
また、弊社の土の特徴である沖積土も、河川氾濫や沼地の土壌として有機物が分解されて出来た土です。沖積土も、泥炭と同じ様に過湿で低pHにより腐植が蓄積しやすい条件を含んでいます。
弊社の土に腐植が含まれるのも、こういった面からも説明が出来ますね。
また、腐植の分解の程度において、栄養腐植と耐久腐植とに分けることが出来ますが、それは次回以降に見ていきましょう。
腐植の含まれる土やその資材などはコチラ
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