前回、バーク堆肥においての施用の効果と注意点を見ていきました。
さて、堆肥には、良く言われる完熟堆肥という言葉があります。
土に入れても、害のない完熟堆肥を使いましょう。
完熟、完熟、完熟...とさも完熟と書けばまるで無農薬を意味するかの様に安心みたいなイメージを取りかねない
そんな言い方をされていますが。(そんなことはない!?)
で実際のところ、本当に完熟でないとダメなのでしょうか?
今回は、その堆肥の完熟に関して、述べていきたいと思います。
まず堆肥には、未熟、中熟、完熟堆肥と大まかに3段階に分かれます。
未熟堆肥とは、イネ藁やもみ殻、植物残渣や生の家畜糞(かつての人糞、肥溜めもそう)などがあります。
これらは、易分解性有機物=まだまだ全然分解されていない状態の有機物(植物状態のまま)が多く含まれ、土に入れてもこれらが分解されるのに、窒素が消費されて、肝心の植物に窒素がいかない=窒素飢餓が起こります。この窒素飢餓は、良く聞いたことはあると思います。だから、良く堆肥を発酵させて完熟させた堆肥を使いましょうとゆうことですね。
では、完熟堆肥に対して、その完熟手前、中熟の堆肥とは、どういう状態でしょうか?
中熟堆肥とは、まだ未分解の有機物を残しながら、発酵が多く進んでいる状態で、堆肥の中には様々な微生物が多く混在する状態を言います。
微生物というと、急に難しそうに聞こえますけど、大きく分けると、糸状菌、放線菌、細菌などが混在している状態のことを言います。
これら微生物が堆肥の発酵過程(完熟過程)と大きく関係しています。
では、堆肥化の中で、この微生物の移り変わりを見ていきましょう。
堆肥化の中で、まず易分解性有機物(植物の形をしたものなど粗い未熟なもの)が分解されるとまず糸状菌という微生物が生成されます。この糸状菌は、増殖スピードが速くあっという間に広がっていきます。しかし、この糸状菌の中には、有害菌(植物にわるさをする菌)も潜んでいます。植物に良い菌も言れば、悪い菌もいるのが糸状菌です。有害菌が一気に増殖すると、植物はすぐにダメージ(病気や障害)を受けてしまいます。窒素飢餓だけでなく、病気の観点からも、未熟の堆肥は危険性が高いと言えます。
堆肥化の中で、糸状菌がある程度堆肥を分解し、糸状菌が分解できるものがなくなっていくと、次に放線菌が活躍して広がっていきます。この放線菌は、先ほどの有害菌である糸状菌と対立出来る力を持っています。(拮抗作用)有益菌とも言います。
その後、放線菌の次に、細菌などの一般菌へと移り変わり、完熟堆肥へとなっていきます。
◎まとめ
堆肥 ➡ 未熟・中熟・完熟堆肥と分けられる。
堆肥化の中で
糸状菌 ➡ 放線菌 ➡ 細菌 へと微生物は移り変わっていく
これらを踏まえると、
- 未熟堆肥は、易分解性有機物が分解途中で窒素飢餓が起こりやすく、また糸状菌の増殖が多いため、糸状菌の中でも有害菌の増殖による病気や障害を受けやすい。
- 中熟堆肥は、易分解性有機物はある程度分解され、堆肥の中で、糸状菌と病気に抵抗力のある放線菌が混在している状態。
- 完熟堆肥は、易分解性有機物はある程度分解され、細菌が増殖するまで微生物の移り変わりは進み、細菌と放線菌、良い糸状菌(非病原性糸状菌)や有害菌である糸状菌(病原性糸状菌)など多種の微生物が混在している状態。
では、やはり微生物の種類の豊富な完熟堆肥が一番いいのか?というと
一概にそうでもない見方もあります。
その理由はなせか?
それは次回に続きます。 長くなりましたので...(笑)
コメントをお書きください
前田めぐみ (金曜日, 01 7月 2022 07:13)
とてもわかりやすくまとめてくださり、ありがとうございます。とてもスルスルと入ってきて面白かったです!もっと知りたい!と思いました。
GS (金曜日, 01 7月 2022 10:08)
>前田みぐみ様
少しはお役に立てたかと思うと、光栄です。最近はあまり更新出来ていませんが、、、また更新していきたいと思います。なお、より具体的なことは、専門書がありますのでそちらをご参考にしてください。